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ペガサス号の、旅立ちの時が迫っていた。

西暦2050年10月24日―― 出発の時刻は午前8時。
その2時間程前、乗務員8人はレインボーカラーでデザインされたユニホーム姿で、施設内のラウンジで時を過ごしていた。
この施設は、アルジェリア国内のサハラ砂漠の、地下8千メートルに建設された国際機関によって、開発運営がされていた。

午前7時、乗務員はペガサス号に乗り込む。球体の形をしたペガサス号は、時空を移動することができる乗物。
そう、人類が今まで想像してきた夢の乗物、タイムマシン。
乗務員はそれぞれの席に座り、シートベルトを着ける。
出発のカウントダウンが60秒前から始まる。

彼らはそれぞれ球体のエンジンキーを手にしている。
それを「オ・キ・ヲ・ツ・ケ・テ」の発信の合図で、「ラージャー!」と答え、その球体を始動するためキーホールに入れる。
8つの球は、船体の周囲100メートルのドーナツ型の空間へと転がり、回り出す。そしてカウントダウンとともに、その回転が高速に、そして光速へと向かっていき、生み出されたエネルギーは時空間を歪ます動力源になっていく。

乗務員とその他関係者が見守る中、そのエネルギーはどんどん高まっていき、時空間を行き来する旅がいよいよ始まろうとしていた。
20秒前になると、船体の周囲にプラズマ(カミナリ)が発生し、船体が徐々に小さくなっていく。
船体が今まさに発進しようとしていた。
固唾を飲みながら乗務員は、クリスタルガラスの上半球の船体から通して見える周囲の風景が徐々に、大きくなっていくのに気づいていた。

そして、カウントが5・4・3・2・1・0… ペガサス号の船体はみるみる小さくなり、最後にはバチバチっと音を立てて消え、彼ら8名の時空間旅行が始まった。

このペガサス号の船出をサポートしているコントロールセンターの人たちは、不安な顔でいっぱいな中「この先どうなるのか」とつぶやいていた。

もし成功すれば…

明日10月25日の午前7時59分40秒過ぎに、この場所に帰還することになっていた。

つづく