ペガサス号の乗務員8人は既に指定された地へ、明日からそれぞれ夜明け前に、送ることになっていた。その地は、エジプトのナイル川の流域へ、ビシャとベンが担当することになっていた。イラクのチグリス川の流域へは、エビーとタイが ――。パキスタンのインダス川の流域へは、ダイとホテが ――。そして中国の長江の流域も兼ねることに――。
南米のインカ文明前に栄えていたエクアドルのバルディビア文明が発祥した地へは、ジュロとフクが担当することになっていた。それぞれ、その期間は7年間。
夜もふけてきて二次会的な雰囲気で、下の階の多目的エリアにみんなが集まってきた。その場でタイは15センチ程の大きさの石包丁を、他の7人にプレゼントした。タイの手作りの道具であった。タイは、
「この1万年前の時代は石器時代であり、この石包丁が役に立つのではないかと思い、ここに持ってきたんです。材質は当時のものより、丈夫に作ってありますよ。本来この石包丁(穴が二つ開いている)は、包丁としての役割はもともとなかったのですが、私が改良したので包丁としても石斧としても使うことが出来ますよ!」と言葉を添えた。皆、口々に、
「これはずばらしいものだ。ありがとう!」と言いながら感謝の笑顔を添えた。
続いて、ホテより、
「私からも、皆さんにプレゼントを持ってきました。私は若い時に習った機織りの経験を活かして、手作りの布の袋を作ってきました。色は大地の色と同じで、茶色で作りました」と言って、みんなに手渡した。
「これもすばらしい…ありがとう!」とメンバーは、ホテに感謝のことばと笑顔で応えた。
メンバーはそれぞれ得意なものでお互いをサポートすべく、ホテに続いて… 次に声を上げたのはベンだった。
「この石器時代、私たちの衣裳を時代にマッチしたものへとするために、私が用意させていただきます。コンピュータを使って、自動で作られますが… 体のサイズと多少の好みをデータ入力後、すぐに作り上げられて試着出来ますよ」と、ベンは説明を加えた。
「これも、ありがたい!」と言って、ビシャが一番乗りで衣裳の製作工程が始まった。もちろん、クツのような物(ハイソックス)も作られた。こうして、8人全員の衣裳が出来たのでした。
ペガサス号はこの後、自動運転でそれぞれの午前3時(丑寅の刻)に北東(丑寅の方角)から、指定された地点へ向かうことになっていた。そして8人全員を送っていった後、地球の最高峰の山であるエベレストの山頂に、ペガサス号は停泊することになる。
注)丑寅とは、あの世(死の世界)への通り道。病人の最も恐れる時間・方角。
画像引用)SEIKO MUSEUM GINZA