ジュロは村の長から背中を力強く押されて、早速、船造りに取り掛かることになった。そこで、はじめに道具の準備をする必要があった。この時代は石器時代にあたるので、鉄製の斧などはもちろんあるはずがない。

そこで役に立つのが、2050年製のウルトラ石包丁。これがかなりの優れものだった。一見、ありきたりの石器のようなのだが、材質は超合金で作られていて絶対に割れない。切れ味は抜群でどんなに硬い石でも、自在に加工していくことができるというものだった。道具を作るための道具として、2つの石包丁を活用していった。

10人以上で船造りをしていくことになるので、石斧もその数だけ必要となった。また大きい石斧とともに、小さめの石斧(なたのようなもの)も必要となった。穴を開ける石のキリも作られた。

作業を進めているジュロのところへ、村の長がやって来た。

「何か手伝えることはないか?」と。そこでジュロは、

「十数人ばかり、人手が欲しい。それと、船の胴体となる太く大きな木が欲しいのだが…」とお願いをした。それを聞いた後、しばらくしてから村の長が若者十数人とともにやって来た。

「この若者たちに、船造りの手伝いをぜひさせてほしい。そして大きな木は、近くの森にいくらでもあるから、それを…」と言葉を添えた。

ジュロとフクはその言葉を聞いて、大きな道が開けたようで、感激いっぱいだった。

早速、ジュロはその若者たちと森に行き、船の胴体となる太い木を探し始めた。木の直径が2メートル以上のものがあればと探していたところ、一人の若者が「これはどうですか?」と聞いてきた。その木は、それは立派な木だった。ジュロがほれぼれする木であった。そして村の長にその木を切り倒すことの承諾を得てから、用意された石器の斧を使って、切り倒すことが出来た。

この船が完成するまで、おそらく1年近くはかかるかもしれない。そうなると、来年の秋頃に、赤道を西へ向けての船出となることが予想された。

太平洋の海流、バルディビアから赤道の海流に乗って西へ西へとフィリピンを目指し、そして長江の河口に接岸させるという予定で――。

つづく

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