エビーとタイのパン作り工房も軌道に乗りだし、そのパンを求めての客も集まってきた。又、パン作りを手伝わせてほしいと希望する者まで出てきた。そこで小麦の栽培にはじまり、小麦粉作りそしてパンを焼く石窯も、増やすことになりました。

そんな中でチグリス川の河口からいつも塩の入った袋を手にして、パンを買い求めにやって来る者と顔見知りになり、大口の取り引きとなっていった。その者は舟でやって来るのでエビーは、

「一度、私をあなたの住む河口の村へ連れていってはもらえませんか…」とお願いした。するとその者は、

「それはお安いご用ですよ!」と、承諾してくれた。

早速、たくさんのパンを買い入れた舟に、エビーも同乗して川を下っていった。そしてその舟は、ペルシャ湾に注ぐ河口の地に着いた。海岸の様子を見渡すと、そこには塩作りの塩田があちこちに見られました。

舟から荷物を下ろしてその者の営む雑貨店のような家に着くと、そこはパンを買い求めに来ていた人で賑わっていました。

「このパン、人気があるね…」とエビーが話すと、その店の者が、

「けっこう遠くからも、このパンの味に惹かれてやって来る人もいるんですよ」と話してくれた。

「今日は川の上流で、このおいしいパンを作っている人を、ここに連れて来ましたよ」――と、エビーのことを紹介してくれた。そして半月ほど、エビーはその地に滞在することとなった。

滞在中に硬い石の塊を見つけて、それをいつも身につけている特製の石包丁を使って、石包丁2つを作った。再びチグリス川を上っていく舟の便にエビーが、滞在のお礼にと見送りに来ていた家族に、その石包丁を手渡したのでした。