バルディビアでの海岸にて、木の直径が2メートル以上はあるかという巨木を切り出しての、船の胴体となる部分をくり抜いての作業が進められていた。これは太平洋を西へ航海するための大きな丸木舟(帆船)でした。ジュロ船長とフク船長代行が率いて他に、10名以上が乗組員として予定されている。製作を始めてから1年程たったあたりで、ようやくある程度の船のかたちを整えることができていた。

そして、一度テスト航海をすることになった。せっかくなのでと奇想天外な生き物が多く生息する場所に一度行ってみたいというメンバーの思いもあって、バルディビアの海岸から西へ向かってのガラパゴス諸島(イサベラ島)を目指すこととなった。

メンバーは秋空の穏やかな日和に、日の出とともに出航した。波風はほとんどなく、乗員の漕ぎ手により西へと進んでいった。この船の航行に船乗員一同は、歓喜の思いを口にしていた。

そして、前方に島が見えてきた。ガラパゴス諸島だ。今回のテスト走行では予定以上に時間がかかってしまったこともあって島には上陸はせず、Uターンをして赤道を東へと、元来た航路を引き返すこととなった。

「せっかく来たのにね!」とフクがつぶやいた。

テスト航海は無事成功した。

この後、太平洋を西へ西へと進んでいく大航海に備えて、いろいろな準備が進められた。その中に、長期の航行での食料の問題や、船全体をより安定化させるための重心の問題などまだまだ多くの課題が残っている。

つづく