2050年10月、北緯38度47分、西経9度30分―― ユーラシア大陸最西端のロカ岬に、ベンは立っていた。

ここから広がる大西洋の大海原を眺めて、これから始まる未知の冒険に、胸を膨らませていた。ベンはロカ岬に建てられている石碑に、目を奪われた。

カモンエスの石碑だ。

そこには「ここに地終わり、海始まる(ONDE A TERRA SE ACABA E O MAR COMECA (CAMOES)」… こう綴られていた。

カモンエスの石碑の側で目を閉じ、その不思議な力を心の中で楽しんでいた。

そこへ、彼女と待ち合わせをしていたのか、一人の男性が近づいてきました。ペガサス号の同乗者エビー(EBIE)であった。会話はなかった。しばらくの間、2人は心地よい風に髪をなびかせながら、大西洋の彼方に沈んでいく太陽を眺めていた。太陽が沈み、あたりが少し薄暗くなってエビーはつぶやいた。

「そろそろ行こうか!」エビーは不思議な力に導かれているかのように、うなずいた。エビーの乗ってきたバイクに乗り、2人は目的地に向け走り出した。青々と美しいジブラルタル海峡を経由して、サハラ砂漠のあるアルジェリアへと向かっていった。

途中、サハラ砂漠にあるタッシリ・ナジェールという山脈の岩絵を見に行く予定にしていた。古代人の残した岩絵、古代人の描いたスケッチの数々を、2人は目の当たりにした。

この「タッシリ・ナジェール」とは、現地語で「水量の多い土地」を意味していておそらく1万年前は、水に恵まれた緑の多い土地だったのだろう。

それが今では、アフリカ大陸の3分の1にも相当する1千万平方キロメートルを占める、世界一の砂漠地帯となってしまっている。2人はタッシリ・ナジェールを訪れたことで、地球環境の変化について大いに興味を持ったようであった。

タッシリ・ナジェールに立ち寄った後、再び2人はバイクで、サハラ砂漠の中を走り始めた。そして、アルジェリア国内にある国際機関のゲートに到着した。

簡単な検査がなされ通行許可を得ると、2人は施設内のエレベーターに乗り、下降用ボタンを押した。エレベーターは、地下8000メートルへと降下していった。エレベーターの下降中、エビーとベンは顔を見合わせた。ちょっと緊張していることに気づいたベンは、右手を胸にあて、大きく深呼吸をして心を落ち着かせた。エレベーターは集合場所のフロアーに到着した。2人はユニホームに着替え、施設内の乗務員専用ラウンジに入っていった。

つづく

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